膜輸送

(Essential細胞生物学)
1.脂質二重層は溶質やイオンを通さない(非極性小分子はフリーパス、電荷のない極性分子も小さければ通る。イオン、電荷を持つ分子は大きさに関係なく通らない)
2.膜輸送タンパク質は輸送体とチャネルの二種類。
脂質二重層を複数回貫通する構造をもつ。(ポリペプチド鎖に囲まれた通路が出来る)
チャネルは通過させる分子を大きさと電荷で選別する。開放状態のときはいくらでも通過できる。
輸送体は回転式の改札口のように、タンパク質の結合部位にぴったり結合した物質のみと特異的に結合し、1回に1つずつ通過させるため、輸送の選択性が高い。

受動輸送と能動輸送(輸送の方向を決める)

多くの場合は、溶質の相対的濃度に依存して、方向が決まる。濃度差があり、チャネルか輸送体があれば受動輸送(駆動力を必要としない、促進拡散ともいう)で運ばれる。
濃度勾配に逆らって移動させるには、エネルギーを供給する別の過程と共役させる能動輸送が必要。この場合、輸送体はポンプと呼ばれる。

輸送体の機能

輸送体は極めて選択性が高く、一般には一種類の分子のみを運ぶ。細胞の膜構造には様々な分子に固有の輸送体が独自の組み合わせで存在する。

グルコース輸送体

12回膜貫通型の一本のポリペプチド
グルコースの結合により二種類の状態をとる。(グルコース結合部位が外部に露出するか、細胞内部に向くか)
グルコースが結合すると構造変化を起こし、反対側に移動するので、輸送体が輸送の方向を決めず、濃度の高い方から低い方に運ぶ。
但し、D-グルコースに対する選択性は極めて高い。

膜電位の影響

電荷を持つ分子の輸送には膜電位(膜の両側に生じる電位差)が影響する。細胞膜の細胞質側の電位は外側に対して負になっているので、正電荷を持つ溶質を細胞内に引き込み、負電荷を持っている物質を細胞外に運び出す。また、濃度勾配に従って移動しようとする。陽イオンをくみ出す方がエネルギーが必要。
濃度化学的勾配(電位差に起因する力と濃度勾配から生じる力を合わせたもの)

能動輸送

共役輸送体:溶質の勾配に逆らう方向の輸送と別の溶質の勾配に従う輸送を組み合わせる。
ATP駆動ポンプ:勾配に逆らう輸送をATPの加水分解と組み合わせる。
光駆動ポンプ:光エネルギーにより勾配に逆らう。細菌細胞に見られる。

Na+-K+ATPase

ATPを加水分解して細胞外にNa+を運び出す際にK+を内部に運び込む輸送と組み合わせる。
全ATP消費の30%以上を占める。

Ca++ポンプ

ATPの加水分解と共役してCa2+を細胞外に運ぶ。

共役輸送体

シンポーター(共輸送体):Na+が流れ込むのを利用し、他の溶質を細胞に運び込む。

イオンチャネル

膜を貫通する水溶性の小孔を作って、水溶性小分子が細胞や細胞小器官を受動的に出入りできるようにしている。
ギャップ結合(2つの細胞の間に孔を開けるもの)もあれば、ポリン(ミトコンドリア外膜に水を通すチャネルを形成する)のもあるが、多くは無機イオン(Na+,K+,Ca2+、Cl-)を通すイオンチャネルである。

イオンチャネルの選択性

特定の無機イオンのみを通す(イオンの直径と形、チャネルを作るアミノ酸電荷の分布によってきまる)
イオンチャネルはゲートを持ち、特定の刺激で開と閉の状態を切り替える。

チャネルの開閉刺激
電位依存チャネル
電位センサーをもち、膜電位の変化に応じチャネルが開く。神経細胞で電気シグナルの伝達を担う。
機械刺激依存イオンチャネル
音刺激を神経の電気活動に変換する。
電気シグナルと化学シグナルの変換
電位依存Ca2+チャネルは電気刺激により開いて、細胞内Ca2+濃度上昇により脱顆粒により化学シグナルに変換する。
神経伝達物質依存チャネル
化学シグナルを電気シグナルに再変換する。