がん原性指針
労働安全衛生法第 28 条第3項の規定に基づき厚生労働大臣が定める化学物質 による健康障害を防止するための指針
- 趣旨
- 化学物質(以下「対象物質」)又は(対象物質の含有量が重量 の1パーセントを超える「対象物質等」)を製造し、又は取り扱う業務に関し、製造、取扱い等に際し、事業者が講ずべき措置について定めた。
- 対象物質
- アクリル酸メチル(96-33-3)
- アクロレイン(107-02-8)
- 2-アミノ-4-クロロフェノール(95-85-2)
- アントラセン(120- 12-7)、エチルベンゼン(100-41-4)
- 2,3-エポキシ-1-プロパノール(556-52-5)
- 塩化アリル(107-05-1)
- オルト-フェニレンジアミン及びその塩(95-54-5 ほか)
- キノ リン及びその塩(91-22-5 ほか)
- 1-クロロ-2-ニトロベンゼン(88-73-3)
- クロロホ ルム(67-66-3)
- 酢酸ビニル(108-05-4)
- 四塩化炭素(56-23-5)
- 1,4-ジオキサン (123-91-1)
- 1,2-ジクロロエタン(別名二塩化エチレン)(107-06-2)
- 1,4-ジ クロロ-2-ニトロベンゼン(89-61-2)
- 2,4-ジクロロ-1-ニトロベンゼン(611- 06-3)
- 1,2-ジクロロプロパン(78-87-5)
- ジクロロメタン(別名二塩化メチレン) (75-09-2)
- N,N-ジメチルアセトアミド(127-19-5)
- ジメチル-2,2-ジクロロ ビニルホスフェイト(別名DDVP)(62-73-7)
- N,N-ジメチルホルムアミド(68-12- 2)
- スチレン(100-42-5)
- 4-ターシャリ-ブチルカテコール(98-29-3)
- 多層カーボン ナノチューブ(がんその他の重度の健康障害を労働者に生ずるおそれのあるものとして 厚生労働省労働基準局長が定めるものに限る。)
- 1,1,2,2-テトラクロロエタン (別名四塩化アセチレン)(79-34-5)
- テトラクロロエチレン(別名パークロルエチレン) (127-18-4)
- 1,1,1-トリクロルエタン(71-55-6)
- トリクロロエチレン(79-01-16)
- ノルマル-ブチル-2,3-エポキシプロピルエーテル(2426-08-6)
- パラ-ジクロ ルベンゼン(106-46-7)
- パラ-ニトロアニソール(100-17-4)
- パラ-ニトロクロルベン ゼン(100-00-5)
- ヒドラジン及びその塩並びにヒドラジン一水和物(302-01-2、7803-57- 8 ほか)
- ビフェニル(92-52-4)
- 2-ブテナール(123-73-9、4170-30-3 及び 15798-64- 8)
- 1-ブロモ-3-クロロプロパン(109-70-6)
- 1-ブロモブタン(109-65-9)
- メタ クリル酸2,3-エポキシプロピル(106-91-2)
- メチルイソブチルケトン(108-10- 1)
- ばく露を低減するための措置
- (1)N,N-ジメチルホルムアミド及び1,1,1-トリクロルエタン(等) を製造し、又は取り扱う業務のうち、有機則第1条第1項第6号に規定する有機溶剤業務)
- (2)パラ-ニトロクロルベンゼン又はパラ-ニトロクロルベンゼン(等)を製造し、又は取り扱う業務
- (3)エチルベンゼン、クロロホルム、四塩化炭素、1,4-ジオキサン、1,2-ジクロ ロエタン、1,2-ジクロロプロパン、ジクロロメタン、ジメチル-2,2-ジクロロ ビニルホスフェイト、スチレン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、テトラクロロ エチレン、トリクロロエチレン及びメチルイソブチルケトン(エチルベンゼンほか 12 物質)又は重量の1パー セントを超えて含有する(エチルベンゼン等)を製造し、又は取り扱う業務のうち、特化則第2条の2第1号イに規定する「クロロホルム等特化則適用除外業務」に措置を講ずる。
-
-
- ア 危険性又は有害性等の調査等に基づいて、次に掲げる作業環境管理に係る措置、作業管理に係る措置その他必要な措置を講ずること。
- イ 上記アによりばく露を低減するための装置等の設置等を行った場合、次により当該装置等の管理を行うこと。
- (ア)局所排気装置等については、作業が行われている間、適正に稼働させること。
- (イ)局所排気装置等については、定期的に保守点検を行うこと。
- (ウ)エチルベンゼン等を作業場外へ排出する場合は、当該物質を含有する排気、排液等による事業場の汚染の防止を図ること。
- ウ 保護具については、同時に就業する労働者の人数分以上を備え付け、常時有効かつ清潔に保持すること。また、労働者に送気マスクを使用させたときは、清浄な空気の取り入れが可能となるよう吸気口の位置を選定し、当該労働者が有害な空気を吸入しないように措置すること。
- エ 次の事項に係る基準を定め、これに基づき作業させること。 (ア)設備、装置等の操作、調整及び点検 (イ)異常な事態が発生した場合における応急の措置 (ウ)保護具の使用
- (4)略
-
- 作業環境測定について
- N,N-ジメチルホルムアミド等有機溶剤業務(略)
- (2)クロロホルム等特化則適用除外業務
- ア 屋内作業場について、エチルベンゼンほか12物質の空気中における濃度を定期的 に測定すること。なお、測定は作業環境測定士が実施することが望ましい。また、測定は6月以内ごとに1回実施するよう努めること。
- イ 作業環境測定を行ったときは、当該測定結果の評価を行い、その結果に基づき施設、設備、作業工程及び作業方法等の点検を行うこと。これらの点検結果に基づき、必要 に応じて使用条件等の変更、作業工程の改善、作業方法の改善その他作業環境改善の ための措置を講ずるとともに、呼吸用保護具の着用その他労働者の健康障害を予防す るため必要な措置を講ずること。
- ウ 作業環境測定の結果及び結果の評価の記録を30年間保存するよう努めること。
- (3)対象物質等を製造し、又は取り扱う業務(略)
- 労働衛生教育について
- 特化則適用業務は適用除外される。ただし、労働安全衛生規則第4章に基づく安全衛生教育が必要であることに留意すること。
- 従事させる前に 4.5 時間以上の労働衛生教育を行う
- ア 対象物質の性状及び有害性
- イ 対象物質等を使用する業務
- ウ 対象物質による健康障害、その予防方法及び応急措置
- エ 局所排気装置その他の対象物質へのばく露を低減するための設備及びそれらの保守、点検の方法
- オ 作業環境の状態の把握
- カ 保護具の種類、性能、使用方法及び保守管理
- キ 関係法令
- 労働者の把握
- 常時従事する労働者を1ヶ月ごと
- 氏名
- 業務の概要と期間
- 事故があった場合の概要と応急措置
- 常時従事する労働者を1ヶ月ごと
「指針」について(厚労省労働基準局長;令和2年2月7日)
特化則により、規制の対象とされなかった業務について、講ずるべき所定の措置を記述。
対象物質
- 哺乳動物を用いた長期毒性試験から、発がん性が判明したもの(必ずしもヒトに対するがん原生は確定していない)
- 対象物質とそれを1%を超えて含有するもの
根拠法:労働安全衛生法第 28 条第3項
- 第二十八条(技術上の指針等の公表等)
- 厚生労働大臣は、第二十条から第二十五条まで及び第二十五条の二第一項の規定により事業者が講ずべき措置の適切かつ有効な実施を図るため必要な業種又は作業ごとの技術上の指針を公表するものとする。
- 2 厚生労働大臣は、前項の技術上の指針を定めるに当たつては、中高年齢者に関して、特に配慮するものとする。
- 3 厚生労働大臣は、次の化学物質で厚生労働大臣が定めるものを製造し、又は取り扱う事業者が当該化学物質による労働者の健康障害を防止するための指針を公表するものとする。
- 一 第五十七条の四第四項の規定による勧告又は第五十七条の五第一項の規定による指示に係る化学物質
- 二 前号に掲げる化学物質以外の化学物質で、がんその他の重度の健康障害を労働者に生ずるおそれのあるもの
- 4 厚生労働大臣は、第一項又は前項の規定により、技術上の指針又は労働者の健康障害を防止するための指針を公表した場合において必 要があると認めるときは、事業者又はその団体に対し、当該技術上の指針又は労働者の健康障害を防止するための指針に関し必要な指導 等を行うことができる。
- 第五十七条の4(化学物質の有害性の調査)
- 化学物質による労働者の健康障害を防止するため、既存の化学物質として政令で定める化学物質(第三項の規定によりそ の名称が公表された化学物質を含む。)以外の化学物質(以下この条において「新規化学物質」という。)を製造し、又は輸入しようとす る事業者は、あらかじめ、厚生労働省令で定めるところにより、厚生労働大臣の定める基準に従つて有害性の調査(当該新規化学物質が 労働者の健康に与える影響についての調査をいう。以下この条において同じ。)を行い、当該新規化学物質の名称、有害性の調査の結果 その他の事項を厚生労働大臣に届け出なければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当するときその他政令で定める場合は、この限りでない。
- 一 当該新規化学物質に関し、厚生労働省令で定めるところにより、当該新規化学物質について予定されている製造又は取扱いの方法等からみて労働者が当該新規化学物質にさらされるおそれがない旨の厚生労働大臣の確認を受けたとき。
- 二 当該新規化学物質に関し、厚生労働省令で定めるところにより、既に得られている知見等に基づき厚生労働省令で定める有害性がない旨の厚生労働大臣の確認を受けたとき。
- 三 当該新規化学物質を試験研究のため製造し、又は輸入しようとするとき。
- 四 当該新規化学物質が主として一般消費者の生活の用に供される製品(当該新規化学物質を含有する製品を含む。)として輸入される場合で、厚生労働省令で定めるとき。
- 2 有害性の調査を行つた事業者は、その結果に基づいて、当該新規化学物質による労働者の健康障害を防止するため必要な措置を速やかに講じなければならない。
- 3 厚生労働大臣は、第一項の規定による届出があつた場合(同項第二号の規定による確認をした場合を含む。)には、厚生労働省令で定めるところにより、当該新規化学物質の名称を公表するものとする。
- 4 厚生労働大臣は、第一項の規定による届出があつた場合には、厚生労働省令で定めるところにより、有害性の調査の結果について学識経験者の意見を聴き、当該届出に係る化学物質による労働者の健康障害を防止するため必要があると認めるときは、届出をした事業者に対し、施設又は設備の設置又は整備、保護具の備付けその他の措置を講ずべきことを勧告することができる。
- 5 前項の規定により有害性の調査の結果について意見を求められた学識経験者は、当該有害性の調査の結果に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。ただし、労働者の健康障害を防止するためやむを得ないときは、この限りでない。
- 化学物質による労働者の健康障害を防止するため、既存の化学物質として政令で定める化学物質(第三項の規定によりそ の名称が公表された化学物質を含む。)以外の化学物質(以下この条において「新規化学物質」という。)を製造し、又は輸入しようとす る事業者は、あらかじめ、厚生労働省令で定めるところにより、厚生労働大臣の定める基準に従つて有害性の調査(当該新規化学物質が 労働者の健康に与える影響についての調査をいう。以下この条において同じ。)を行い、当該新規化学物質の名称、有害性の調査の結果 その他の事項を厚生労働大臣に届け出なければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当するときその他政令で定める場合は、この限りでない。