Bcl-2

bcl-2遺伝子は人癌遺伝子として単離された。
ヒトの慢性リンパ性白血病などにみられる染色体転座t(11;14)(q13;q32)で14番染色体上の免疫グロブリン遺伝子により活性化される11番染色体上のbcl-1と、t(14;18)(q32;q21)により活性化される18番染色体上のbcl-2に区別される。
bcl-2遺伝子産物は線虫の細胞死を抑制する。baxはbcl-2と二量体を作り細胞死抑制活性を阻害する。
ヒトBcl-2遺伝子は第18染色体上に位置し、分子量26kDaのタンパク質をコードする。
BCL-2ファミリーに属するタンパク質はBH (Bcl-2 homology) ドメインと呼ばれるアミノ酸配列を1つ以上有しており、またC末端側に疎水性の高いTM(transmembrane)領域を有している。
現在Blc-2ファミリーはその機能と構造から3つのグループに分類されている。Antiapoptotic memberには、Bcl-2やBcl-XL、Mcl-1などのアポトーシスを抑制するメンバーが含まれる。このメンバーに含まれるタンパク質の多くはBH1からBH4までの4つ全てのドメインを有する。Multi-BH proapoptoticにはBaxやBak、Bokなどのアポトーシスを促進するメンバーが含まれ、BH4を除く3つのBHドメインを有している。BH3-onlyには、BadやBid、Bik、Bimなどのアポトーシスを促進するメンバーが含まれる。アポトーシス促進機能はMulti-BHと同等であるが、BH3のみを有する点でMulti-BHと構造的に異なる。

機能

Bcl-2ファミリータンパク質の主要機能は、ミトコンドリアにおけるアポトーシスの制御である。
紫外線やγ線照射、また活性酸素による酸化ストレスなど種々の刺激はBAX及びBAKの活性化を通じてアポトーシスを引き起こす。
アポトーシスを引き起こす刺激はミトコンドリアの膜透過性を亢進させ、ミトコンドリアの内膜と外膜の間に局在するアポトーシス誘導タンパク質(シトクロムcやSmac/Diablo)を細胞外へと流出させる。Bcl-2ファミリータンパク質は主にミトコンドリアの膜透過性を制御し、これらのアポトーシス誘導タンパク質の細胞質への流出を抑制する。
細胞外へ流出したシトクロムcとApaf-1で形成される複合体はカスパーゼ9を活性化、さらにカスパーゼ3、6、7を活性化することでアポトーシスが起こる。
またBH3-onlyタンパク質の多くは通常ミトコンドリア以外の場所に不活性状態で存在しており、アポトーシス刺激に応じてミトコンドリアへと移行した後活性化する。活性型BH3-onlyタンパク質はミトコンドリア上でAntiapoptotic memberを抑制し、Multi-BH proapoptoticを活性化することでミトコンドリアの膜透過性を亢進させると考えられている。